いつまで経っても他人行儀

2014.04.03 → 繋がりについての一考察
「繋がりやすさナンバー1」を標榜しております会社の携帯電話を使用しているのですが、その宣伝文句に反して、僕の携帯電話には【繋がり】を可視化したところの、電話の着信やメールが届くことが殆どありません。

更には、先祖の頃から続く祟りか何かかと思いますが、一年くらい前にアドレス帳が突然クラッシュしてしまうという不可思議現象に陥ったため、今や僅かに残存しておりました知り合いの方々に、こちらから【繋がる】こともかないません。いわば今の僕の携帯電話は、台風によって外部へと繋がる唯一の橋が崩落してしまった山村であり、そこで巻き起こるわらべ歌をモチーフにした連続殺人事件は、すなわち巨大な密室で行われた犯行ということなので「つまり……犯人は……この中にいるッ……!」

さて、そんな繋がりやすさのパーセンテージに一切貢献していないであろう僕の携帯電話に、つい先日の3月23日、奇跡的にもメールが届いておりました。
送信者は誰あろう僕の父親で、内容はと言いますと「誕生日おめでとう」という、端的かつ心温まるものとなっておりましたが、はたして僕の誕生日は4月25日。

普段であれば放置するところなのですが、父親がとうとう若年性のアレになってしまったのではないかという可能性を考慮し「俺の誕生日は一ヵ月後くらい先。誰かと間違えてない(^_^)?」と精一杯の優しさを込めたメールを送信しましたところ、そこから連絡はプツリと途絶え、そして僕の携帯電話は、人知れず海底に沈む古代遺跡の如く、再び静謐で安寧とした沈黙に沈んでいったのです。

しかし、その二日後のことなのですが、今度は母親から「誕生日おめでとう、遂に三十歳になりましたね」という衝撃的な内容のメールが届いたところで僕は、これはいよいよ何かおかしな現象が起きているのだと、戦慄と共に自覚するに至ったのです。

まるで時間軸が混乱しているかのように、一ヶ月も先の誕生日を祝福するメールが、父親と母親の二人から、間隔を空けて届く――この現象が意味するものとは何か。
駆け足で結論を述べますと、それは文字通り【未来の両親からのメール】なのではないかと、わたくし考える次第であります。すなわち、一ヶ月先の未来において、両親が【未来の僕】に向けて送ったメールが、何らかの理由によって時空の壁を遡上し、未来から見た過去、すなわち【現在の僕】へ届いたものだと解釈すれば全ては丸く収まりますし、何かそんな感じの映画だか小説だかを見たことある気がするし、これはもう絶対そうに違いないよ……絶対そうに決まってるよ……。

僕に友達が存在しないばかりに【繋がり】という一種の磁場から隔絶され、殆どスタンドアローンな個体として、まるで幽霊のように存在していた僕の携帯電話。本質的に【繋がり】をアイデンティティーとしている携帯電話にとって、現在の状況は、存在しているのに存在していないという、極めて不合理かつ矛盾を孕んだものであり、その状況は遂には【繋がりやすさの特異点】を生み出します。

そして、その【特異点】によって生じたエネルギーは、時空に歪みを生じせしめ、未来と現在が【繋がって】しまったのだとしたら……どっかの漫画で得た知識によると、【重力】と【時間】は密接に関係しており、【重力の特異点】であるブラックホールでは時間の流れが滅茶苦茶になっているというお説もあるようですし……そうだよ……絶対そうだよ……だとしたら、今僕が持っているこの携帯電話は、一種のタイムマシンのようなものな訳だから、父親か母親にメールして、一ヶ月先に値上がりする株とかを聞いて売り買いする生活をすれば、一生仕事をしなくて済むのでは……?

などとパラノイア的な夢想をしておりましたら、父親から「お母さん共々、一ヶ月誕生日間違えてた。メンゴ」という、どうしようもないメールが届いた挙句、一ヶ月も早く【遂に三十歳のおっさんになってしまう】という現実だけを突き付けられた格好となるので、僕は「んもぅ……」と呟いたかと思うと、自らの意思でひっそりとこの世との【繋がり】を断ち切ったのでありました。享年29歳。余りにも早すぎるその死に、しかし落涙するものは一人もいなかったのです。まったく、残念ですね。
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